歯科専門雑誌『アポロニア21』編集長による コラム

Vol.33 EHR(エレクトリック・ヘルス・レコード)の時代へ

今、歯科だけでなく、あらゆる医療機関で電子カルテが導入されるようになっています。患者さんの症状、病歴、治療履歴などを電子的に記録し活用するシステムですが、これをさらに進化させたシステムとしてEHRというものが国際的に注目されています。

これは、治療の有無に関わらず、例えば保険証などに個人の健康状態、病歴などを記録していく社会基盤を指す言葉で、エレクトリック・ヘルス・レコード、つまり電子的健康記録というものです。例えば、アメリカでは、公的医療保険制度の拡充を目指すオバマ政権のもとで、同時にEHRの導入が検討されています。技術的には、先進諸国であればすぐにでも導入可能ですが、アメリカ以外ではあまり注目されていません。  その理由は、個人情報保護の観点から見て、非常に大きなリスクを抱えているからです。EHRの保険証に記録された患者さん個人の健康情報が、例えば民間保険会社の契約条件に患者さんの同意なく反映されるとすれば、患者さんにとって不利な社会環境を作ってしまうことになります。このような課題を解決した上で、医療費を適正に配分する社会システムとして導入することが絶対の条件となります。

歯科においても、薬の服用状態によっては唾液の分泌に影響し、歯周病が治りにくい、むし歯が出来やすい、入れ歯が合わないというトラブルが起こることが知られています。そのため、歯科医院でも、患者さんの全身状態や服薬状況、生活習慣などを十分に知っておく必要性が高まってきています。それにはEHRは効果的な社会基盤だと言えますが、世界の多くの国でこのシステムが導入されにくい問題のひとつは、それを人々が受け入れられるかという点にあります。医療の効率性が高まる可能性があるとしても、自分の健康状態がすべて記録された保険証を持ち歩くことに人々が抵抗感を示せば、なかなか制度を構築することが難しいからです。皆さんはどう感じられるでしょうか。

月刊「アポロニア21」編集長の著作紹介

 歯科医療の起源、そして「これから」18世紀イギリスのデンティスト

著作紹介:
現代につながる歯科医療の起源を歴史的に探ることによって、今後の歯科医療および、歯科医院経営の課題を明らかにします。 早稲田大学図書館が契約する電子ライブラリを通し、膨大な18世紀英国の歯科関連の書籍・広告を縦覧。「矯正、ホワイトニング、そして移植もすべて存在していた」「歯の病気で死ぬ時代があった」「補綴はデンティストリーではなかった」など、興味深い事実を証明する資料が多数掲載されています。
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