歯科専門雑誌『アポロニア21』編集長による コラム

Vol.23「医療水準」という言葉の意味を考える

医療に関するトラブルが法廷に持ち込まれた場合、これを「医事紛争」と呼びます。医事紛争では、診療側の説明義務履行など医療契約の妥当性を中心に双方の意見がやりとりされますが、最近、歯科の分野で厳しく問われるようになっているものに「医療水準」というものがあります。

これは、その歯科医師が行った医療行為が、そのときの平均的な医学、医療技術に照らしてまっとうなものであるかを問うものです。明らかに時代遅れな治療、突飛な実験的な治療というものを行った場合には、「医療水準に合わない」として批判されることになり、裁判や調停という場面では、医療者側に不利な条件になります。

昨年末、インプラントを行っている歯科医師の一部に対して、ある法律事務所がインプラントに関する「医療水準」についてのアンケートを実施しました。インプラントについては、オッセオインテグレーションタイプのほかにもいくつかありますが、現在では、オッセオインテグレーションタイプが主流となっており、インプラントを行う歯科医師の間では、実質的には「医療水準」と見なされているようです。このアンケートは、ブレードタイプなど、すでにあまり行われなくなった治療について、「医療水準に合わない」ということを傍証するために実施されたものだと考えられます。おそらく、古いタイプのインプラントが実施された結果、予後不良となり、法律事務所にトラブルが持ち込まれたものでしょう。

弁護士などが、特定の治療について、「医療水準に合うかどうか」ということを判断することは容易ではありません。高度な医学的知識が必要とされること、また、裁判所が認める「医療水準」の幅が時代とともに大きく変わるからです。数年前までは、文書主義といって、特定の治療について、それが正しいとする論文を提示しなければ医療水準への適合を証明しにくいとされてきましたが、最近では、少し、傾向が変わり、他の臨床医の判断が重視されるようになってきました。アンケートが実施されたことも、その流れであると考えられます。

医師、歯科医師には、自分の判断で最適の治療内容を患者さんに提示して合意を得ることが広く認められていますが、その中には、すでに時代遅れ、あるいは、極端な実験的医療など「医療水準に合わない」ものも含まれることがありえます。今後は、できれば、複数の歯科医師の意見を聞く(セカンドオピニオン)ことによって、妥当な治療を自ら選択するという態度が、安全で効果的な治療を受けるために必要になってくるのではないでしょうか。

アポロニア21編集長によるコラム

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