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歯科専門雑誌『アポロニア21』編集長による コラム
Vol.20イギリスの歯科医療難民
先日、イギリス歯科医師会の雑誌に、「ハンガリーに歯科治療に行く人たち」という記事が掲載されました。イギリスでは、必要な歯科治療をなかなか受けることが難しくなっており、痛みがひどい、歯肉が化膿しているなど、急いで治療してもらいたい人が、ハンガリーで歯科治療を受けるツアーに多数参加しており、イギリスの厚生労働省に当たる役所や、歯科医師会などもこのツアーに協力するようになっているそうです。
イギリスの医療制度は、NHS(ナショナル・ヘルス・サービス)と呼ばれる国営医療が特徴です。これは、人口当たりに公務員に準ずる医師、歯科医師を配置する割り当て制の医療で、戦後、イギリスにおける医療の普及に役立ってきました。しかし、医師、歯科医師の収入があまりに低いことからなり手がいなくなり、2000年頃には常に医療従事者が不足する、「医療崩壊」という事態になっています。
その後、ブレア政権時代にNHS改革が進められましたが、歯科においては対策が遅れ、患者さんがイギリス国内でなかなか治療を受けられなくなったことからハンガリーへの医療ツアーに多数の参加者が出るといった状態になっているようです。
もう一つ、イギリスで繁盛し始めた歯科関連サービスは、ショッピングモールで、定額の費用負担、休日や、昼休み時間帯も診療するというチェーンです。ここではNHSの保険診療はできませんが、これまで、自費診療を行う高額クリニックと、NHSの中間の価格帯で、しかも「なかなか診てもらえない」というNHSの歯科医院の欠点を補う休日診療が好評を博しているのです。
日本の医療保険も「崩壊の危機だ」と言われますが、イギリスでは10年ほど前に実際に医療が崩壊してしまった経緯があります。その後、医療消費者の不満が新たなサービスを生み出しました。イギリスの例を見ると、意外に、医療崩壊も、新しい医療サービスを生み出すきっかけになるかもしれませんが、その中には、患者さんの国外脱出というような事態も含まれる可能性もあります。
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