歯科専門雑誌『アポロニア21』編集長による コラム

Vol.17「もうだめですね。抜きましょう」にご用心

最近、インプラントを積極的に推奨する歯科医師の中に、術後のインプラント体の安定を考えて、できるだけ早めに抜歯して、インプラントに置き換えるよう患者さんに勧める考え方が広がっています。これは、もとをただせばアメリカの歯科医師の間で広く見られる傾向で、歯を残そうとして失敗し、結果的に訴訟となるよりも、はじめからインプラントにしてしまえば、とりあえずは訴訟のリスクは避けられるという事情もあり、軽度の歯周疾患や、充填処置で済ませられるようなむし歯など、従来は抜歯されなかったような症例で、積極的に抜歯するようになっているのです。

これを、「先進的治療」と考える一部の歯科医師が、日本においても早期抜歯、インプラントという治療方針を立てるようになっています。それぞれのケースでの医療判断は、歯科医師が責任をもって行うことですから、私から何かコメントする立場にはありませんが、最近の歯科医療現場の中で、歯を残そうとはしていない歯科医師が増えつつあることは認識しておく必要があるのではないかと思います。これには理由がないわけでもなく、早期に抜歯すれば、その後のインプラントが安定しやすいとされているのは事実ですが、インプラントと天然の歯がまったく違うものであり、天然の歯はかけがえのないものである、ということを認識していない歯科医師も多いのが現状です。

また、患者さんに対して所要の説明を行わず、とりあえず抜歯だけしておいて、歯がなくなった後に「実は、ここにインプラントや入れ歯を入れると○○百万円必要です」などと、営業をかけるような歯科医院も少なくないのです。こうなると、犯罪的な感じもしますが、患者さんの側でも、歯を抜くような重大事をゆるがせにせず、「なぜ抜歯が必要なのか」「その後、どのような治療が考えられるのか」など、必要なことを確認することが求められます。「歯科医師はプロだから、自分にとって最良の判断をしてくれるだろう」ということは、残念ながら、どの歯科医院でも当てはまることではなくなっているのも事実なのです。

「もうだめですから、抜きましょう」と歯科医師に言われたとき、その判断の根拠、その後の治療計画などを確認することが必要だと言えます。

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